水とか流体を使って何かやりたいなぁというのは以前からあった。そこに、Vue Fesのロゴが墨流しだったことが重なった。水で何かしたい気持ちと目の前のモチーフがつながって、墨流しをやることになった。
過去にも水とアクリルで作品を作ったことがある。そのときうまくいかなかったことがずっと引っかかっていて、今回はリベンジでもあった。水を扱うのが簡単ではないことは知っている。それでも、もう一度やってみたい気持ちがあった。
でもまぁ、何とかなるだろー。
ならなかった。
まずは墨を落として、水を流す
最初に考えていた仕組みは単純だった。上から墨がポタポタ落ち、その下には薄く水が流れている。墨が水面に広がり、流れに乗って消えていく。水と墨を絶えず足せば、その様子を見せ続けられるんじゃないか。
この時点ではアームもいなくて、墨をどう一定量ずつ落とすか、水をどう薄く流すかを考えていた。
墨流しというと、水面の模様を紙に写し取るものを思い浮かべる。今回見たかったのは、その途中で水と墨が動いている時間だ。広がったり、崩れたり、流れていったりする状態を見続けられるものにしたかった。
せっかくなのでロボットアームを使おう
そんな中、チームから「せっかくなのでロボットアーム使おう」という提案があった。自分も使ってみたかったので採用した。
ただ、水と墨だけのところにアームが入ると、急に機械の存在感が強くなる。できるだけ機械感は出したくなかったけど、その異質さが面白くなるかもしれない。
まぁ、何とかなるだろー。
自然にポタポタ落とすつもりだった墨を、アームに持たせた筆から落とす形へ。主役は水と墨のまま、そこまで墨を運ぶ役割をアームに任せることにした。
筆を取り付けたロボットアーム。
水は循環させればいい
展示中ずっと新しい水を足して、黒くなった水を捨てていては交換作業が続いてしまう。なので最初から水は循環させるつもりだった。
水路から落ちた水をタンクで受け、墨を濾過してポンプで上へ戻す。下側は二層式の水槽のように、汚れた水と濾過した水のタンクを横並びにする。それぞれ20Lくらいのタンクに対して、循環させる水は10Lくらい。容量に余裕を持たせれば、あふれずに運用できそうだ。
水の通り道も溜める場所も決まった。あとは部品を揃えてつなげばいける気がしていた。
制作初期の構想。右で水を受け、濾過した水を左から汲み上げる。
濾過には水槽用のフィルターを使えばいい。魚の水槽だって水をきれいにしているし、同じようにできるでしょう。
そのつもりで活性炭フィルターに墨を混ぜた水を通した。
普通に黒い水が出てきた。
一度通せばまた使える水に戻るつもりだったのに、出口の水も黒い。水槽のフィルターで墨も取れるという見込みが甘かった。そこでようやく「そもそも墨汁って何なんだ」と調べ始める。気づけば水処理のことばかり調べている。この話は第2回で。
そもそも墨が流れない
水路の上でも問題が起きていた。落とした墨の一部が沈んで底に残る。流れて出口へ向かうつもりだったのに、途中で止まってしまう。これでは先にフィルターを用意しても、そこまでたどり着かない。
水量を増やすと多少は動くけど、排水が追いつかず水深が増えると濁ってしまう。薄く流そうにも、箱の表面が水をはじいて広がらない。ちょっとした傾きでも流れ方が変わる。水を増やせばいいのか減らせばいいのか、やってみるまではわからない。
上からちょろちょろ流すより、下からまっすぐ強く流した方がいいのか。表面を加工すれば広がるのか。9月18日のメモには「2mmぐらいの堰なら沈下した墨もそこそこの水量で流れそう」とも書いていた。まだ見込みだけど、流し方から試し直していた。
水路とフレームを検討していた設計画面。
形を作れば終わると思っていた
水路を作って、ポンプとフィルターをつなげば完成。そのつもりだったのに、前提にしていた「薄く水が流れている」から難しい。
底に残る墨は少しずつ蓄積して、新しい模様まで見えにくくする。墨を落とすだけでなく、使った墨を外へ出し続けないと展示は続けられない。次はそのために水の流し方と濾過を試した話。
