anōnumos 制作記録|光る物体を、鉄とアクリルでつくる

anōnumos 制作記録|光る物体を、鉄とアクリルでつくる

2026年2月28日・3月1日、大阪・北加賀屋のクリエイティブセンター大阪で開催された「HOMEWORKS 2025 10th Anniversary」に、光の彫刻「anōnumos」を出展しました。

高さ2.3m、80cm四方。単管にLEDを取り付け、鉄とアクリルで囲んだ作品です。搬入する荷物は梱包や設営用具も含めて400kg近く、出荷記録では384kg。この重さをどう扱い、安全に組み立て、展示し、解体するか。見せたい姿と同じくらい、そのことを考えていました。

単管パイプと金具を選ぶ

つくりたかったのは、役に立つものでも、意味を読み取ってもらうものでもなく、ただ光を放つ構造体でした。キャンプファイアーをぼーっと眺めてしまうように、光そのものを見ていられるものにしたかった。

単管パイプと鉄を選んだのは、会場が造船所の跡地だったからです。かつて鉄を切り、組み、つないで船をつくっていた場所。新しい素材を持ち込むより、造船を支えてきた鉄を使いたいと思いました。

単管の骨格、鉄の重さ、錆びた表面。その質感が、この場所には合う。LEDの光を鉄で包むことで、造船所に残る時間や風景とつながるものにしたいと考えました。

まずは売り場で単管パイプと金具を選び、仮組みと採寸を進めました。パイプ同士をつなぐところに、LEDも取り付けなければならない。金具がどのくらい場所を取り、どこで固定できるかを確かめていきました。

並べた単管パイプとクランプ。 売り場で手に取った、単管パイプと別の部材をつなぐ金具。 床に単管パイプを並べ、クランプでつないだ仮組み。 LED側の取り付け穴をノギスで採寸する。

単管を切る

単管はパイプカッターで必要な長さに切りました。

作業台に固定した単管パイプに、パイプカッターを取り付ける。 切断作業中の単管パイプと、足元に並ぶ短く切った部材。 単管パイプとクランプで組んだ骨組み。

LEDと鉄を、どうつなぐか

鉄の外装は、曲げた鉄板を上下・左右に分割し、ボルトでつなぐ構成です。外装同士の穴は正確に合わせたい。一方、LED側は組み付けながら位置を調整したい。そのため、接続用と調整用の穴を分け、寸法と位置を図面に指定して発注しました。

anōnumosの鉄製外装の組み立て図。上下の部材と左右の分割部材をボルトで連結する構成。

届いた鉄には、指定した穴が開いていない部分がありました。先方の加工漏れで、そこは自分で開けることに。加工自体はできますが、予定外の作業でした。

鉄製の外装部材にドリルで穴を加工する。 単管の骨組みに取り付けたLEDパネルの背面。 鉄の外装と単管パイプ、LEDパネルの接続部。

アクリルはしっかり固定しつつ、光や素材より留め具が目立たないようにしたい。固定用の治具は、寸法や角度を変えながら検討しました。

Labで組み上げた外装と、表面の粒が見えるLEDパネル。

いちばん悩んだのは、重さ

安全に展示するには、組み立てと解体の途中も考えなければいけません。片側のパネルだけになれば、重さのかかり方も変わります。

基本的には、一人でも無理なく組み立て・解体できる構成を目指しました。ただ、一人だと作業効率がかなり悪いので、現場では手伝ってもらいました。

2月1日には、ChatGPTでLEDを斜めに取り付けた際の転倒について相談していました。LEDは1枚7.5kg、4枚ずつ前後2面で計60kg。さらに外周を金属で囲む。土台の幅はどうするか、重りはどこに、どれだけ置くかを検討していました。

部材の重さと位置から、重心や転倒しやすさを試算するスプレッドシートもつくりました。中央のトラスにLEDを吊り、足元を十字に広げる別案も含め、数値で比較できるようにしました。

2月13日には、垂直の単管に固定したクランプの耐荷重と、その根拠となる資料も調べています。全体の転倒と、接続部が支えられる重さの両方を検討し、足元には20kgの重りを4つ用意する計画でした。

骨組みの下部に配置した円盤状の重り。

錆び止めはいらない

外装は意図的に錆びさせたかったので、発注時に「錆止めは不要」と伝えました。届いた部材を塩水にさらしたものの、赤錆だけでは思い描いた質感になりませんでした。

悩んだ末、一度黒錆にしてから削り、また塩水にさらすことに。さらに黒錆にして、削る。表面の変化を見ながら繰り返し、理想に近づけていきました。

シートを敷いた場所に並べた、錆加工中の鉄の外装部材。

アクリルを、どう分けるか

LEDの前には、色や質感の違うアクリルを重ねます。縦や斜めに分ける案を経て、幅500mmの横長の板を、高さを変えて積み重ねる形にしました。

どこを細くして、どこを大きく残すか。Illustratorのスクリプトで平方根・対数・べき乗などのパターンを比較し、高さ52mmから494mmの10枚で、全体を2000mmにしています。

anōnumosのアクリル加工図。幅500mm、高さの異なる10枚の素材と寸法。

カーマイン、ウルトラマリン、レモンイエローに、カスミ、クリアーマット、オパールなどを交ぜました。映像に重ねる素材で、光の見え方も変わります。背面には黒一色の拡散アクリルを使い、LEDの粒をやわらげています。

テクスチャ入りには特注で時間がかかるものもあり、今回は日程に合わせて、すぐ手に入るものから選びました。

事務所にはアクリルのサンプルがありますが、テクスチャ入りや特殊なものも集めて、実物を見ながら選べるようにしたいと思っています。

この重さを、どうやって大阪まで運ぶか

Labでつくったものを、どう大阪まで運ぶか。輸送も悩みのひとつでした。

そこで知ったのが、JITBOXチャーター便。キャスター付きの鉄製ボックス単位で荷物を運ぶサービスです。内寸は幅104cm、奥行104cm、高さ170cm、最大積載重量は500kg。この中に部材を収める方法を考えました。

単管、鉄の外装、LEDを入れる木箱、部品のケース。Illustratorで上から見た配置と横から見た積み重なりを描き、荷積みをシミュレーションしました。

Illustratorで作成した荷積みのシミュレーション。ボックスの上面・側面に部材やケースを配置した積載計画図。

図中の重量は検討時の数値。出荷記録は384kg。

積み方に合わせて部材を梱包し、現地で使う脚立、台車、工具、予備の金具も一緒に送りました。

箱や緩衝材で梱包した部材と単管パイプ。 輸送用のかご台車にまとめた梱包済みの部材。

会場に立てて、光を入れる

2月26日・27日に設営しました。

足元には重心を下げるための重りを置き、万が一の転倒に備えて、耐荷重500kgのワイヤーで天井側の構造材につなぎました。

展示会場周辺で撮影した、表面が錆びたドラム缶。

電源ケーブルをどこに通すか。錆の表情を見せるライトを、どこから当てるか。組み上がってからも、自分たちで見え方を確かめながら調整しました。

HOMEWORKSで展示したanōnumosのカラーアクリル側。 HOMEWORKS会場で光るanōnumosの黒い拡散アクリル側。

映像はopenFrameworksとGLSLシェーダーでリアルタイムに生成し、約30シーンが1分ごとに切り替わります。文字や具体的な絵柄は置かず、模様や明るさがゆっくり変化していきます。

作品説明にも黒皮の残る金属板を使いました。取り付け穴を開け、ボルトやナットを見せて無骨な印象にし、文字はカッティングシートで貼りました。

会場で撮影したanōnumosの側面。説明板と単管の構造が見える。

展示が終わったら、もう一度部材に戻す

3月2日に撤収。外装やパネルを外し、単管をばらして梱包しました。

展示終了後、解体して梱包した部材を会場の床に並べた状態。 撤収後、トラック前に置かれた輸送用のかご台車。

鉄を使いたい。でも重い。しっかり固定したい。でも留め具は目立たせたくない。つくりたい姿と、組み立て・輸送・解体の都合を行き来しながら、考えては手を動かしていました。

作品ページ「anōnumos」には、展示写真とアーカイブ映像を掲載しています。

「こんなものをつくりたい」から、一緒に

僕らIE3は、デザイン・映像・ソフトウェア・ハードウェアを組み合わせて体験をつくるチームです。今回のように、映像から素材や構造、現場での見え方まで一緒に考え、手を動かしています。

「こんなものをつくりたい」「この場所で、こんな体験ができたら」。まだ形が決まっていない段階から、ぜひご相談ください。一緒に試しながら形にしていきます。

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