# 墨流し制作記録 #2｜水を捨てずに、墨だけ捨てたい

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> Published: 2026-09-22

水路の底に墨が残り、新しく落とした墨が見えにくくなったので、最初は人力で拭いた。

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拭いたら、めちゃくちゃ見えるようになった。

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墨が残るかどうかで、こんなに変わるのか。次の模様を見せるには、使った墨を外へ出し続けないといけない。拭けば見えることはわかったけど、展示中ずっと人が拭くわけにもいかない。流れる水に運んでもらいたかった。

![透明な面に細い線となって広がる墨の模様](https://cms-media.ie3.jp/suminagashi-process-4521-9yldryyo.jpg)

    _水面に広がる墨の模様。_

## 水を増やせばいい、ではなかった

沈んだ墨を動かしたくて水を増やすと、排水が追いつかず濁ってしまう。試した範囲では水深を2〜3mm程度に抑えた方がよさそうだった。薄い水なら残った墨を流せることもある。ただ、送り込む量と同じだけ排水できなければ、その水深を保てない。

その薄い水に十分な流れを作るには、水路を細くすれば楽になる。当時のメモでは幅300mm、400mmと迷いながら、200〜250mmくらいに抑える案も考えていた。使う水も排水する量も減らせる。循環できるかまだわからない中では、都合がよかった。

ただ、見せたいものとしては細い。水と墨が横に広がる様子を見たいので、できれば500mmくらい欲しい。使う水を増やすには、やっぱり濾過して戻す仕組みが必要だった。

## 墨汁って何なんだ

水槽用の活性炭フィルターでは、墨を混ぜた水は黒いままだった。そこで調べて知ったのがコロイドだ。

墨汁は食塩のように水に溶けているわけではなく、煤などのとても細かい粒子が水の中に散らばっている。こうした小さな粒子が分散した状態を「コロイド」というらしい。見た目は一様でも、中には粒子がいる。

ただ、そんなことはこのとき調べるまで知らなかった。黒さのもとが粒子なら、取り除くにはその粒子を捕まえないといけない。しかも普通のろ紙も通り抜けるほど細かいという。フィルターなら何でも取れるわけじゃないのか。

調べると実験室みたいな話ばかり出てくる。水槽のフィルターでいけると思っていたのに、ずいぶん遠いところまで来てしまった。

## 粒子をまとめて取り除けないか

細かい粒子同士をまとめて、大きくしてから取り除く「凝集」も調べた。そのひとつが電気凝集。面白そうだったけど、水素ガスが発生するという説明を見て、知見のない自分が屋内展示で扱うのはやめようと判断した。

次はミョウバン。墨を混ぜた水に入れて2〜3時間待つ。
でも、期待していた変化はない。量や条件のせいかもしれないけど、この試験ではうまくいかなかった。

しかも少しとろみが出たように感じる。水を流したいのに、水にとろみをつけてどうする。

砂や石を何層か重ねる濾過も調べた。参考に見た動画では、水が少しずつ出てくる。

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遅い。圧倒的に遅い。

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きれいになっても、循環に追いつく速さで戻せなければ使えない。

## スペックを見ても、決めきれない

そこで候補になったのが、細かな膜で濾過するUFメンブレンフィルター。見ていた製品の公称値は0.1μm程度。一方、当時調べた墨の粒径は0.08〜0.3μm程度だった。

数字だけなら小さい粒子は通ってしまいそうだ。ただ、手元の墨汁にも同じ数字が当てはまるのかはわからない。公称値を見て「これなら取れる」と判断していいのかも、自分にはわからなかった。さらに細かい粒子に対応するRO膜も調べたけど、装置が大がかりになりそうだった。

これでいける、とはまだ思えない。水路を細くして、水を交換する運用にするか。1時間に一回、いや30分かもしれない。
交換し続ける展示を想像するとやっぱり厳しい。それでも濾過できないなら、その方法で成立させるしかない。

## 通してみたら、透明だった

何度目かわからないYouTube検索で、家庭用浄水器を使って濾過する動画を見つけた。水がそれなりの速さで流れ、透明になって出てくる。

速攻買った。どうせならと気になっていた工業用のUFフィルターも買った。

![作業机に並べた筒状のフィルター、チューブ、継手](https://cms-media.ie3.jp/suminagashi-process-4391-4bbpxkwy.jpg)

    _フィルターとチューブ、継手を揃えたところ。_

墨を混ぜて真っ黒にした水をフィルターへ。スペックへの疑いは残っていたけど、どちらからも見た目には透明な水が出てきた。ずっと難しそうに思えていたことが、目の前ではできている。

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できた。

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![シンク周辺でポンプとフィルターをチューブで接続した試験の様子](https://cms-media.ie3.jp/suminagashi-process-4419-nsjd23ay.jpg)

    _ポンプとフィルターをつないだ試験。_

どちらも中空糸膜を使っていた。ただ、墨をどの程度取り除けたのかは測定していないし、なぜ取れたのかも絞れない。ここで確かめられたのは、手元の組み合わせで水が見た目に透明になったことだった。

それでも循環の目処は立った。戻した水の中で、次の墨の模様を見せられそうだ。透明でも粒子が完全になくなったとは限らないし、長時間使えば状態は変わる。その確認は残るけど、少なくとも水を捨て続ける以外の道ができた。

## じゃあ、500mmにできる

濾過して戻せるなら、もう少し水を使える。だったら水路も広げられる。最終的に500mm×1000mmにすることにした。

ようやく、作りたかった大きさにできる。
ただ、循環できることと、その幅に十分な水を流せることは別の話だった。幅を広げると水量が足りず、チューブも細い。次はポンプと配管を調整することになる。

## 墨流し制作記録シリーズ

- [墨流し制作記録 #1｜墨流しを、動き続ける作品に](https://ie3.jp/log/-1)
- [墨流し制作記録 #2｜水を捨てずに、墨だけ捨てたい](https://ie3.jp/log/-2)
- [墨流し制作記録 #3｜幅500mmに、水と墨を流す](https://ie3.jp/log/-3500mm)
- [墨流し制作記録 #4｜筆を動かし、水面を映す](https://ie3.jp/log/suminagashi-4)
